この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
父親を亡くされた依頼者からの相談です。父親は個人事業を営んでおり、休眠口座を含めて多数の金融機関口座をもっていました。また、几帳面な性格なのか、１０冊以上にわたるノートに金銭のやり取りを記録されており、その中には相続人らとの多数の金銭のやり取りが残っていました。父親が亡くなったため、相続人（姉妹）で遺産分割を行おうと思ったものの、姉妹間の折り合いが悪く、また膨大な資料を独力では整理することができず、相談に来られました。
解決への流れ
遺産の調査の後、当事者間での話し合いが難しい状況にあることから、すみやかに遺産分割調停の申立を行いました。調停の場で、父親のノートを丹念に整理して、相手方に多額の生前贈与が行われていたことを示し、また父親の末期における依頼者の介護等の出費なども資料として、依頼者にとって有利な範囲での調停が成立しました。
ノートの記録は、矛盾した記述も多く、全面的に信用性が認められるような正確な証拠ではありませんでした。しかし、その中でどのような点が矛盾しており、どこは矛盾していないかなどといった点を整理して示すことにより、信用に値しない証拠とも異なることを強調することで、調停委員ひいては相手方に対する有効な説得が可能になったと考えられます。このようなノートの記述に関して、相続人間で解釈に違いがなければ良いのですが、解釈に対する客観的な見通しを立てることは、当事者ではなかなか難しいのではないかと思います。そのような中、第三者として客観的に資料をながめ、専門的に分析した上で、説得力のある主張を行うということは、やはり専門家である弁護士ならではの仕事として、役割を果たせたと思っています。